この記事は、こんな営業の悩みを持つ方へ
この記事は、営業マン・営業責任者・経営者の方に向けたものです。自社でテレアポをしている方も、外部にテレアポを委託してアポを取得している方も対象になります。
次のような課題に心当たりはないでしょうか。
- アポは取れて商談に行くものの、名刺交換と会社紹介で終わってしまい、その後に繋がらない
- 1つの案件で商談回数が多くなり、受注までに時間がかかりすぎる
- コスト削減を切り口に提案しても、「現在の取引先で問題ありません」「間に合っています」で断られてしまう
これらは、営業担当者個人のスキルの問題というより、営業プロセスの設計で解決できる課題です。本記事では、当社が実際の営業活動を通じて確立した「コスト削減提案営業の進め方」を解説します。
鍵になるのは、タイトルにもある「2段階電話」と「見積書共有」の2つです。まずは、結論から説明します。
結論:なぜ「見積書の共有」が受注を決めるのか
最初に、この記事で最も重要な考え方をお伝えします。
ここでいう「見積書」とは、お客様が現在契約している既存の取引先から受け取っている見積書のことです。当社が出す見積書ではありません。これを、商談を行う前にお客様から共有していただきます。
なぜ、わざわざ商談前に取得するのか。理由は、商談当日の質を決定的に左右するからです。
電話で「どんなサービスを、どういう要件で発注していますか?」と質問しても、得られる情報には限界があります。お客様も業務の合間に対応しているため、口頭で詳細を語ってもらうのは難しいのが実情です。
しかし、見積書には情報が詰まっています。何を・何台・いくらで・いつ発注しているのかといった具体的な内容が、一枚に集約されています。これを事前に握っておけば、商談当日に「その内容ならやりたい」とお客様が思える提案を、あらかじめ用意して臨めるのです。
だからこそ、見積書を商談前に共有してもらえた時点で、勝負はほぼ決まっていると言っても過言ではありません。後述しますが、見積書を共有いただけた案件の受注率は平均80%前後に達しています。
この「見積書を共有してもらう状態」をどうやって作るのか。そのための営業プロセスを、ここから順に解説していきます。
なぜ初回のテレアポで詳細なヒアリングをしてはいけないのか
営業担当者の多くは、初回のテレアポで次のような質問を行います。
- 現在の取引先はどちらですか
- どの程度利用されていますか
- どのような条件で発注されていますか
- 現在の価格はいくらですか
営業担当者からすれば自然な質問ですが、お客様の視点では話が違います。取引条件や購買情報は、重要な経営情報として管理されています。関係性が構築されていない段階で、こうした詳細情報が開示されるケースは限定的です。
実際、初回接触時に情報収集を優先すると、会話が短時間で終了してしまう傾向があります。つまり、初回のテレアポで深掘りしようとすること自体が、その後の関係構築を妨げてしまうのです。
当社のやり方:電話を「2段階」に分ける

ここで、当社が大事にしている考え方を紹介します。それが、タイトルにもある「2段階電話」です。
一般的なテレアポは、「1度架電してアポを取得し、そのまま商談に行く」という流れです。しかし、これには問題があります。
アポを取る電話が、どうしても「とにかくお時間をください」というだけのテレアポになってしまうのです。お客様のニーズや課題を十分に引き出せていない状態で商談当日を迎えるため、実際の商談が挨拶・名刺交換・会社紹介で終わってしまうケースが多発します。冒頭で挙げた「名刺交換で終わってその後に繋がらない」という課題は、まさにここで生まれています。
そこで当社では、電話を2段階に分けています。
1回目の電話は、アポを取得することが目的です。ここでは詳細なヒアリングも、具体的な削減金額の提示も行いません。「コスト削減の可能性があるため、一度5分ほどお時間をいただけませんか」といった形でご案内し、改めて話す機会をいただくことだけに徹します。
2回目の電話は、商談の「前」に行います。お客様が改めて時間を確保してくださった状態で、本格的に課題感やニーズを引き出していきます。
つまり2回目の電話は商談そのものではなく、商談前の準備フェーズなのです。この段階でヒアリングを終え、前述の見積書も共有していただくことで、お客様向けにカスタマイズした商談を用意できます。
この一手間によって、1回目の商談から中身の濃いものになり、商談の密度がまったく変わってきます。
2回目の電話で何を聞くのか
2回目の電話では、お客様が時間を確保した状態で本格的なヒアリングを行います。具体的には、次のような内容を整理していきます。
- どのような案件が発生しているのか
- 発注頻度はどの程度か
- 品質重視なのか、価格重視なのか
- 案件ごとの重要度はどう異なるのか
- 現在どのような運用をしているのか
実際の事例では、ヒアリングを進めた結果、一部の案件は品質重視である一方、別の案件では価格を重視していることが判明しました。
ここで重要なのは、「すべての案件を安くしたい企業は存在しない」という点です。企業は案件ごとに判断基準を変えています。営業担当者が一律に価格訴求を行っても、相手企業の課題とは一致しないことが多いのです。
本音は「安くしたい」ではなく「利益を改善したい」

多くの企業が本当に求めているのは、単純なコスト削減ではありません。利益改善です。
例えば、次のような案件については、多少価格が高くても現状維持を選ぶ企業が多く存在します。
- 品質が求められる案件
- ブランド価値に直結する案件
- 失敗が許されない案件
一方で、次のような案件については、コスト削減の余地を検討する企業が増えます。
- 大量発注の案件
- 定型業務
- 仕様が固定化された案件
今回の事例でも、当初は「間に合っています」という回答でした。しかし2回目の電話でヒアリングを進める中で、「案件によっては安くしたい」という課題が明確になりました。
重要なのは価格提案そのものではなく、企業が改善したいポイントを特定することなのです。
見積書を共有いただけた案件の受注率は平均80%
冒頭でも触れたとおり、当社の営業活動には一つの重要な指標があります。それが競合見積書の共有です。
競合見積書を共有いただけた案件を継続的に分析した結果、その受注率は平均80%前後となっています。
もちろん、単純に価格を下げれば受注できるわけではありません。むしろ重要なのは、お客様が比較検討を行う意思決定段階に入っているということです。
見積書の共有は、単なる情報提供ではありません。「改善提案を受けたい」「比較検討したい」という、お客様側の意思表示でもあります。だからこそ、見積書共有の有無を、受注確度を判断する重要な指標として位置付けているのです。
見積書共有まで進む企業に共通する特徴
これまでの営業活動から見えてきたのは、見積書を共有いただける企業には共通点があるということです。
それは、価格に興味がある企業ではありません。改善に興味がある企業です。
営業担当者が自社サービスの説明ばかりしていると、お客様は比較検討の必要性を感じません。一方で、
- 現状を理解する
- 課題を整理する
- 改善余地を可視化する
というプロセスを経ることで、お客様も比較検討の価値を感じやすくなります。その結果、仕様書の共有、見積依頼、競合見積書の共有、そして商談設定へと進む可能性が高まっていきます。
まとめ

コスト削減提案営業において重要なのは、削減額を伝えることではありません。企業がどこで利益改善を実現できるのかを把握することです。
そのために必要なプロセスを、改めて整理します。
- 初回のテレアポでは売り込まず、2回目の電話の機会を獲得する
- 2回目の電話(商談前の準備フェーズ)で、お客様の課題を整理し、既存取引先の見積書を共有してもらう
- 改善余地が確認できた段階で、カスタマイズした提案を行う
このプロセスを徹底することで、「名刺交換で終わる商談」や「商談回数ばかり増える非効率」から抜け出すことができます。見積書共有率や受注率も、大きく変わってきます。
価格競争が激化する市場環境だからこそ、求められるのは単なる値下げ営業ではなく、課題解決型の営業活動ではないでしょうか。


